ICT活用教育実践例

理工学域 物質化学類

この記事は、2013年にインタビューしたものです。

『スクリーンキャストを用いた情報処理基礎教材』の取組(必修)

  • パソコンの操作画面を撮影しナレーションを加えた教材と演習問題の回答例

今回の取材にご協力いただいた先生をご紹介します。

■お名前: 須田 光広 先生(写真)
■所属・職名: 理工学類 物質化学類 助教

■お名前: 国本 浩喜 先生
■所属・職名: 理工学類 物質化学類 教授

■この科目の担当教員
須田 光広(理工学類 物質化学類 助教)
瀨尾 悌介(理工学類 物質化学類 助教)
松本 豊司(総合メディア基盤センター 准教授)

Q1. この取り組みの対象学生は?

理工学域物質化学類の1年生が対象です。(毎年約90名)

Q2. この取り組みの開始年度は?

「情報処理基礎」は2006年度から始りましたが、この「スクリーンキャストを用いた情報処理基礎教材」は2008年度に作成し、2009年度から利用しています。その後、改良を加えながら継続して利用しています。

Q3. まず、国本先生から、物質化学類がe-Learningを取り入れられたきっかけについてお聞かせください。

金沢大学では2004年から教育にe-Learningを取り入れようとする動きがあり、全学の各系(例えば理学系、地学系、医学系など)から委員が選出され、定期的に会議を開いていました。当時、共通教育で化学を教えていましたが、目に見えない物質の構造や変化を教えるのに、コンピューターグラフィックスやアニメーションによる可視化された教材は、学生の好奇心を引き出し、理解し考察するのに極めて有効だと考えていました。 そこで、ほぼ毎年、FD・ICT教育推進室の教材作成支援を受け、「化学実験に関わる器具や薬品の取り扱い動画教材」や「化学演習の百戦錬磨」などの化学教材を作成してきました。

Q4. では、須田先生から「スクリーンキャストを用いた情報処理基礎教材」についてお聞かせください。

「情報処理基礎」は新入生対象の必修科目です。授業の始めに全学共通の教材(無線LANの使い方や、図書館の利用方法など)が準備されています。また、WordやExcelなどの基本的な使い方の教材も準備されていますが、これらの授業の後に、各学域学類で担当教員がオリジナルの教材を作成しています。
パソコンの操作というのは、言葉や文字で説明するよりも、キーボードや操作画面を目で見た方が分かりやすいので、「Camtasia Studio」(TechSmith社製)というソフトウェアを使い、自分が操作している画面をそのまま教材として使えるようにしました。また、操作手順を説明するナレーションを別に録音して加えました。画面撮影とナレーションは同時に作成することも可能ですが、何度か試したところ、操作手順のスピードと合わせるには、別に録音して重ねる方が教材として完成度が高いようです。

教材の表示イメージ

Q5. そのほかに、この教材の特徴はありますか?

授業では毎回、演習問題が出されます。学生は、課題を画面だけで知らされ、作成した演習問題を提出します。そこで、課題を効率よく作成する回答例を動画教材として作成し、課題提出後に閲覧できるようにしています。

Q6. 学習管理システムではどのような機能を使われていますか?

学生への連絡、資料配布、予習・復習、課題提出、出席管理などを利用しています。単元ごとに理解度を測る4択や5択の演習問題もWeb上で実施しています。また、多人数授業では学生との個別のコミュニケーションは難しいものですが、学習管理システムを利用することで、こまめな対応が可能になりました。

Q7. この教材を作成するにあたって、工夫やご苦労はありましたか?

一番大変なのは、教材作成に費やす時間です。画面の撮影とナレーションを別々に収録するだけでなく、後で画面とナレーションを合わせるのにも時間がかかります。 また、学生によってパソコンにインストールされているOfficeのバージョンが異なり、操作ボタンの名称が違うことがあります。例えば、現在はOffice2010で教材を作成していますが、Office2007以降は「リボン」がありますが、Office2003以前はありませんので、操作の説明に苦労しています。また、たまにMacを持ってくる学生がいて、Office(Mac版)は操作が違うのでとても困っています。
そのほか、学生のスキルに大きな差があり困ることがありました。例えば、自宅で演習問題を解こうとして動画を再生するときに、ポップアップが表示されて再生できない場合があります。「動画が動かない」と質問してきた学生には再生方法を教えましたが、動かないまま、質問しなかった学生がいて、提出期間内に課題を提出できなかった…ということがありました。

Q8. この教材について、須田先生から今後のご計画などについてお聞かせください。

現在の教材をもっと完成度の高いものに編集したいと考えています。例えば、ショートカットキーや、複数のキーを組み合わせて使う方法などを加えたいと思います。また、最近では、タブレット型PCやスマートフォンの普及がめざましいので、これらの機器に合わせた教材開発も視野に入れています。

Q9. では、最後に、国本先生から、今後の抱負などお聞かせください。

ポイントは2点です。

  1. 化学教材としては、市販の教材は自由度がなく編集して使うことができません。特に、日々進化している研究を、いち早く教育に取り入れるには、教員がいつでも自由に編集できるような教材が必要です。金沢大学にはコンテンツ作成スタジオもありますが、まだまだ有効活用されていないようですから、大いに使いたいものです。
  2. 大学や大学院で化学を学ぶとき、化学英語が欠かせません。今ではこのように世界で情報を共有できる時代ですから、英語の論文を読む、書くということはとても大切です。留学生や海外からの研究員も増えていますから、日常的なコミュニケーションだけでなく、お互いの研究を理解するために英語が必要です。しかし、現実には化学に関する専門英語の教材がとても少ないのです。そこで、「化学英語」のe-Learning教材を作りたいと思っています。さらに、国際的な学会発表で使う英語のプレゼンテーションのテンプレートなども作りたいと思います。

――お忙しい中、ご協力いただきありがとうございました。